置き去り

気温3℃午後7時

吹雪のような激しい雪の降る中バスを待つこと10分

ようやく来たバスが、バス停を素通りしていくのを眼前に眺めるという人生初の経験をした。

黒いズボンに黒いコート、黒い鞄。黒づくめ姿が運転手の視界に入らなかったのかと思ったが、それでは自動車のライトの存在意義がなくなる。

バスの運行会社に連絡したらタクシーをよこしてくれるとのこと。

公共交通機関の会社が他社の交通手段に依頼することにおかしさを感じたが、おかげで快適な帰り道になった。

バス会社からの電話で平謝りされたが、悪いのは運転手であって事務員じゃないしタクシーも用意してもらったので穏便に済ませた。

 

ところで何度も言い間違えたり繰り返し謝罪の言葉を繰り返すその姿は謝りなれてなさを感じていたのだが、それはある意味ではいいことだと思った。

何故ならそれは普段謝罪するような事態が少ないということだからだ。

自分の前職の業界では大抵の人が他の作業をしながら電話口で謝罪の言葉を述べられるくらい謝り慣れていた。もちろん自分も朝食を摂りながら謝罪の電話できるように仕込まれたものだ。

謝罪の言葉に申し訳ないという気持ちを含ませていたらこの先やっていけないと先輩や上長によく言われたなぁ

まぁそんな世界についていけなくて辞めたわけだが

気持ちを置き去りにしなければまともに働けない社会が今日もどこかで通常運行しているだろう。

 

ただもう雪道に置き去りにするのだけは勘弁してくれぃ…